ヒューマン

【考えさせられる映画】『ベンジャミン・バトン』に何を思う

はじめに

 どうして生まれたばかりは赤ちゃんなのだろう。なぜ歳をとるのか。若い状態から歳を重ねる方向性は、変わる事はないのだろうか。皆さんはこんな風に疑問に思った事はありませんか?

 老いて生まれて、経験を積んでいく毎に若返る。幼い時には分からなかった事を知って行き、世の中のあらゆる側面が見えて来た頃に、体力的にも力を増し、人生を思うように創造出来る。こんな風に出来たのなら、なんて良いだろう。

 赤ちゃんは、それだけで周りを笑顔にする。それであれば、年を重ねるたびに赤ちゃんに近付けば、寂しく過ごす人はいなくなるのではないか。そんな風にも考えた事もあります。そして、その答えは誰にも分かりません。

あらすじ

 この映画は、数奇な人生を送るベンジャミンのお話です。

 アメリカ・ニューオーリンズで、一人の老女が娘に自身の日記を読む様に伝えます。そこには、ベンジャミン・バトンという男性の事が書かれていた所から始まります。

 ベンジャミンは、生まれたてで、置き去りにされました。それは第一次世界大戦が終結した夜でした。老人施設に置かれたベンジャミンは、経営者の夫婦に育てられる事になります。施設の皆に歓迎されたベンジャミンは、すくすくと育って行きます。

 ただ一つ他の人と違うのは、ベンジャミンは、老人の外見をしていた事でした。青人になった頃、同じ年頃の少女、デイジーと出逢い惹かれ合いますが、外見のせいで遊ぶ事をとめられます。

 17歳のベンジャミンは、若返りを続け、立派に成長していました。そこで船で旅に出ます。辛い太平洋戦争を乗り越え、26歳でニューオーリンズに戻ります。その頃、成長したデイジーは、事故からケガをし、ダンサーの夢を絶たれ、ベンジャミンと少し距離を置いていました。

 辛い経験をした2人は、お互いを大切に思う気持ちを尊重し、一緒に暮らす事にします。そこで、デイジーは娘のキャロラインを産みました。このまま幸せな生活が続く様に思えましたが、若返りを続けるベンジャミンは、ある日突然姿を消します。

ストーリーを深堀り

 人と違うという事は、どういう事なのかを考えさせられる映画になっています。歳を取らない主人公のお話や数多くありますが、愛する人との歳の取り方が違ったらどうなるのか。主人公を演じたブラッド・ピットは、映画『インタビュー・ウィズ・バンパイヤ』でも、永遠の命を持ち、美しくも苦悩に満ちた人生を送る役を演じています。

 思い返すと、歳の取り方が違う2人は、一緒に暮らした時期のみが、お互いの時間が交差する点だったのかもしれません。そう考えると、その一瞬がとても愛おしく、切なく感じられます。

 どうしてベンジャミンは去ってしまったのか。考えながら、最後の結末を観て欲しいと思います。
 

デヴィッド・フィンチャー監督とブラッド・ピット

『セブン』、『ファイトクラブ』と言えば、ブラッド・ピットの代表品です。これでデヴィッド・フィンチャー監督とは3度目のタッグとなりました。気心の知れた2人は、演出をとことん追求していったそうです。

「現実とはかけ離れた寓話的世界の中で、人生や愛の真理を描きたかった」
 監督はこの作品を通して伝えたかった部分に関し「ベンジャミンとデイジーの愛の物語は、心理的なレベルで多くの共感を呼ぶと思う。彼らの抱く気持ちが観る者の心を揺さぶると思うんだ。」と、熱く語っていました。

 それに対して、ブラッド・ピットは表現したかった点をこう伝えます。「依存し合う関係を描くのではなく、もっと深いものを観客に伝えたいと。そこが僕にはとても重要だった。それが僕の答えかな。」そして「難しいのは運命と自分が決めた道の境界線はどこなのかということだ。そして、それはいつも変化していると思う。」と、絶えず考えて演技を行った事を説明しました。

アカデミー賞3部門を受賞

 12部門にノミネートされると、美術賞、視覚効果賞、メイクアップ賞を受賞しました。俳優陣の衣装は素敵で、年代に合わせたお洒落が取り入れられています。

 また、主役のブラッド・ピットの端正な顔立ちと、ケイト・ブランシェットのしなやかな動きがクローズアップされていて、美しい映像になっています。全体的にイエロートーンになっており、しっとりと歴史を綴っています。歳毎に変わるメイクも見ものです。特殊効果で違和感なく見せる技術は、素晴らしい限りです。この技術で、ブラッド・ピットは20歳以上若い年齢を演じました。

 壮大な曲は、フランスの作曲家、アレクサンドル・デスプラが作曲し、ハリウッド・スタジオ・シンフォニーのアンサンブルで作られました。とてもファンタジーな趣が感じられ、話題になった演出です。

まとめ

 奇妙な運命だけれど、誰もが気になる生き方ですよね。愛する人と平和に暮らしたかった彼らを思うと、悲しい部分はありますが、全体的にとても美しい物語になっています。トレイラーを観て引き込まれた方は、是非観てみてください。

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